札幌市南区の小児科・小児外科のはれにこキッズクリニック

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クリニックでお渡しする「ご褒美」は必要か?🎁

クリニックでお渡しする「ご褒美」は必要か?🎁

受診や注射、検査は、大人でも緊張するものです。まして子どもにとっては「知らない場所」「知らない人」「痛いかもしれない出来事」が重なる、ハードルの高い体験になりがちです。
そこで多くの医療現場で使われているのが、シールや小さな玩具などの「ご褒美(リワード)」です。

今回は何気なく配っていると思われているご褒美の効果を真面目に考察しました!

結論から言うと、ご褒美は“うまく使えば”子どもの協力(コーピング)を増やし、次回の受診を少し楽にできます。一方で、使い方を間違えると「取引」になって逆効果になることもあります。今回は、米国小児科学会の保護者向け解説や、動機づけ研究、針手技の痛み・恐怖への研究知見をもとに、考察しました 。

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ご褒美が効く理由:子どもは「成功体験」を覚えます🧠✨

ご褒美は、行動科学でいう正の強化(positive reinforcement)の一種です。
「できた」「がんばれた」直後に、うれしい出来事(シール・選べるカード・ほめ言葉など)があると、子どもの脳はその体験を“成功”として記憶しやすくなります。米国小児科学会でも、具体的な目標行動を決めたうえで、必要に応じて報酬を使う考え方を示しています。

医療の場面で大切なのは、結果(泣かなかった等)よりも、過程(怖いのに病院に来た/診察室のイスに座れた/腕を出せた/深呼吸できた)を成功として残すことです。

「ご褒美」なのか「取引」なのか?

同じシールでも、声かけで意味が変わります。

  • ✅ ご褒美(おすすめ)
    「終わったら、がんばった記念にシール選ぼうね」
    → “経験をふり返って”成功を強化する
  • ❌ 取引(避けたい)
    「泣かなかったらあげる」「動いたらなしね」
    → 失敗への恐怖が強まり、次回の抵抗が増えやすい

学会では罰や減点を中心にしないこと、そして最終的に報酬を段階的に減らしていくことを勧めています。

はれにこキッズクリニック🐻では、、、
自宅で、「頑張ってはれにこに行ったら、ごほうび選ぼうね!」と設定していただけたらと思っています。
段階的に減らすことに関しては、8-9歳になってくると、自然にシールやご褒美は要らないよと言ってくるケースが多く、無理に設定する必要はないのではないかと考えています。

研究から見た「注意点」:ご褒美は万能ではありません

動機づけ研究では、“期待される”物の報酬が、場面によっては内発的動機(自分でやりたい気持ち)を下げうる可能性が示されています。

例えをあげると、
もともと好きでやっていることに対して、ご褒美がなくなると、
「じゃあやらない」となったり、やる気が前より落ちたりすることがあります。
つまり、ご褒美が主役になってしまう感じです。

ただし、医療の受診・注射は「そもそも楽しい活動」ではなく、子どもが“自発的にやりたい”領域でもありませんので、ここでいう一般的な内発的動機云々は気にする必要はなく、恐怖を下げて“できる感覚”を増やす目的で機能するのではないかと思います。

当院でのご褒美計画:うまくいくコツ🎯

1) “小さな目標”をおうちで決める

  • 診察室に入れた
  • イスに座れた
  • 聴診をさせられた
  • 終わったあとに「バイバイ」が言えた

病院に連れ出すこと自体も大変なお子様もいると思うので

  • クリニックの受付のおねえさんに「こんにちは」できた

なんて、小さな目標にしてみてはどうでしょうか。

“泣かなかった”は目標にしない方が安全です。泣くのは自然な反応で、そこを条件にすると失敗体験になりやすいからです。

2) すぐ渡す(できれば5分以内)

行動科学では、強化は行動に近いほど効果が高いのが基本です。通常の診察の子は終わったらすぐに受け付けのご褒美ボックスに誘導してあげてください。検査を頑張った子には検査後にシールをお渡ししていることがあります。

3) 子どもに「選ばせる」

“選べる”は強い味方です。「どれがいい?」と聞くだけで、主導権が少し戻り、受診体験が整いやすくなります。

4) 「言葉」をセットにする

物だけだと「モノが目的」になりがちです。
おすすめの言い方:

  • 「今日はがんばって、病院に来れたね!また来ようね!」
  • 「怖いのに、検査できたね。“がんばったね”👏」
  • 「もしもし上手だったね。お口も大きく開けられてたね🌿」

番外編) 慣れてきたら“モノ”ではなくてもいい

他のご褒美がない病院には行きたがらない!
ご褒美が主役にならないよう、子どもがその行動を身につけてきたら、報酬は段階的に減らすことが必要な場合もあります。その場合は以下のような行動も有効です。
例)毎回のシール → 2回に1回 → 「言葉+ハイタッチ」が中心、など。

はれにこキッズクリニックでも渡せるシールがなくなってしまった時に、ハイタッチにしていることもあります。”あ、そうしている姿を見たことがある!”というご家族もいるのではないでしょうか?

注射・採血など「針の場面」にも💉

針の痛みや恐怖は、将来の医療回避につながることがあります。研究レビューでは、気をそらす工夫(ディストラクション)や、複数の方法を組み合わせる心理的介入が、痛み・苦痛を減らすのに役立つとされています。

ここでのご褒美は、単独で魔法のように効くというより、

  1. 事前に短く見通しを伝える(「消毒→チクッ→おしまい」)
  2. 体の姿勢を安定させる(抱っこ等)
  3. 気をそらす(動画・数を数える・息を吐く)
  4. 終了後に成功を言語化+記念のご褒美

…という“流れ”の最後に置くと、成功体験が締まりやすくなります。 (注:全文英語です→rima.org)

ご褒美の「中身」🧼

当院では近隣の介護事業所の皆さまが作ってくれた、折り紙の手裏剣、スマートウォッチ、指輪、ラブブ(1番人気)をご用意しています。

ご褒美は「取引」ではなく「成功の記念」に🎈

ご褒美の役割は、子どもをコントロールすることではありません。
怖さの中でも“できたこと”に光を当てて、次の受診を少し軽くするためのアイテムです。

  • 条件で縛らず、終わった後に渡す
  • 結果より過程をほめる
  • 選べる形にする
  • 時には慣れたらフェードアウト

ご褒美は“依存”ではなく“卒業できる支援”になります。

これが当院がご褒美を充実させ、準備している(していただいている!?)理由です。

今後もはれにこキッズクリニックをよろしくお願いいたします。

参考情報(ソース)

  • American Academy of Pediatrics (HealthyChildren.org)「Positive Reinforcement Through Reward
  • Deci EL, Koestner R, Ryan RM. 外的報酬と内発的動機づけに関するメタ解析(1999)
  • Uman LS, et al. 針手技の痛み・苦痛に対する心理的介入のレビュー(Cochrane Review, 2007)
  • Taddio A, et al. 予防接種時の痛み軽減に関する臨床ガイドライン(CMAJ, 2015)
  • Borge LM, et al. 小児病棟でのご褒美使用に関する看護師の実践を扱った研究(2025)
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